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共同注意と三項関係に着目したコミュニケーションの発達支援 ー発達障害児編ー

2023.06.07 | Category: 小児,未分類

今回は発達障害をお持ちのお子様に対してのコミュニケーション発達の支援について、「共同注意」「三項関係」に着目してお話ししたいと思います。

こどものコミュニケーションの発達において、「共同注意」「三項関係」の発達が重要になります。

 

「共同注意」とは、他者と関心を共有する物事や話題へ、注意を向けるように行動を調整する能力(Bruner,1975)のことをいいます。

ただ見ているだけではなく、視線と注意が他者と共有されていることが大切になります。

下のような写真の状態ですね。

注意を共有できることがコミュニケーションや、やり取りの基盤となります。

 

・共同注意の発達

乳児は、生後2か月ごろ以降になると対面者の目元や口元に注意を向け、あやすと笑うといった「社会的微笑」が認められるようになります。「こども―他者」の二項関係の始まりです。

生後5か月には意図的におもちゃや物にリーチを行うようになり、「こども―物(玩具など)」の二項関係が積極的になります。

共同注意は「こども―他者」「こども―物(玩具など)」の二項関係から、「こども―物-他者」という三項関係のやりとりを行うようになり発達します。(生後9カ月~10カ月ごろ)

「三項関係」へ発達すると、おもちゃや物を使って他者とのやり取りやあそびができるようになります。

 

・二項関係から三項関係関係にどうやって発達していくか?

児山ら(2015)は「二項関係から三項関係への移行には「交互注視」が重要な役割を果たしている」と述べています。

「交互注視」とは他者と対象物とに視線を切り替えることをいいます。

この時に他者の情動表出を見て、他者の物に関わる意図をくみ取るようになります(塚田2001)。

この「交互注視」によって、「他者意図の理解」が発達していきます。

「他者意図の理解」例:大人が手を差し出すと「おもちゃを渡してほしい」という大人(他者)の意図を理解し、おもちゃを手渡すことができる

 

自閉症スペクトラムなどの発達障害をおもちのお子様は、この三項関係への移行が難しいことがままあります。

三項関係の発達が生後10カ月ごろであることから「10カ月の壁」と呼んだりしています。

 

注意の機能はズームレンズやスポットライトに例えられる仮説があります。(ズームレンズ説、スポットライト説)

発達障害をお持ちのお子様は、注意のピントを合わせにくかったり、逆にピントが過剰に合いすぎて他のものにピントを移動させることが難しいことがあります。

このような注意機能の問題が関与して、「交互注視」が難しく、三項関係への移行が不十分になっている様子が見受けられます。

そのような場合はお子様の普段の様子を観察し、

①そもそもの注意のピントが合いにくいのか

②注意が持続しないのか

③一度ピントがあった注意を解放しにくいのか

を評価してみて下さい。

①②の場合は、おもちゃに注意が向けやすいように、静かな片付いた部屋でおもちゃ以外の注意を引くものを減らす。

その上でおもちゃの形状・色・音が鳴るものなど、注意を引きやすいおもちゃで遊ぶ。

養育者はこどもの注意を引く際に、声掛けだけでなく軽く肩などを叩いて 声掛け+体性感覚 といった多重な感覚を入力する。

このように注意のピントが合わせやすいように 環境・提示物・関わり方の工夫をしてあげて下さい。

 

③の場合は、こどもの注意をこちらに向けようとしてもほとんどがうまくいきません。そもそも注意が解放しにくいわけですから・・・。

そのような場合は、無理にこどもの注意をこちらに向けさせようとするのではなく、こどもが注意を向けているものに養育者が注意を「合わせ」てあげて下さい。

 

常田(2007)は、「共同注意では、乳児と養育者がある対象を同時に見るだけでなく、視線の動きや表情・発声を用いてその対象にまつわる情動的メッセージを相手に伝えている」と述べています。

こどもとのやり取りの中で、ただ単におもちゃを見せるのではなく、表情を大きく動かしり、声の調子を明るくしたり、変化をつけながらこどもに伝わりやすいように関わると、より「他者意図の理解」がしやすくなります。

 

コミュニケーションは急にできるようになるものではなく、毎日の積み重ねです。

たくさん記載しましたが、こどもと養育者が楽しい時間を過ごすことが一番のコミュニケーション発達の支援になると日々のリハビリで感じています。

上手くいかないことも勿論あるかと思いますが、できたかどうかだけにとらわれずに、お子様と養育者様の楽しい気持ちを大切にしてほしいです。

 

今回は発達障害をお持ちのお子様に対してのコミュニケーション発達の支援についてお話しました。

次回は身体障害をお持ちのお子様のコミュニケーション発達の支援についてお話したいと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

加藤でした★

 

【参考文献】

1,児山隆史・樋口和彦・三島修治(2015)乳児の共同注意関連行動の発達-二項関係から三項関係への移行プロセスに着目して―. 教育臨床研究 14 2015研究. 99-109

2,常田美穂(2007)乳児期の共同注意の発達における母親の支援的行動の役割. 発達心理学研究 第18巻 第2号 97‐108

3,大藪泰(2020)共同注意の発達-情動・認知・関係. 新曜社

4.浅野大喜(2012)リハビリテーションのための発達科学入門. 株式会社協同医書出版社

5.J・Ⅿフィンドレイ、IDギルクリスト(2006)アクティヴ・ビジョンー眼球運動学の心理・神経科学- (株)北大路書房

 


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