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脳卒中リハビリ | 越谷リハビリ だるまリハビリセンターの記事一覧

精密な手の動きを可能にする脳神経と損傷後の機能回復について

2023.11.30 | Category: 成人

皆さん、こんにちは。

今日は、精密な手の動きを可能にする脳神経について、興味深い文献がありましたので、お話したいと思います。

前回のブログでヒトの母指は他の霊長類に比べて長く、短母指伸筋・母指屈筋があることで指尖での精密なつまみ動作ができる手の構造になっているというお話をしました。

では、手の構造さえ精密把握に適したものであれば,それで精密把握が可能になるのでしょうか。

答えは「NO」です。

松沢ら(2007)は「精密把握を行うのに必要な感覚情報処理と運動制御を担う神経系が必要となる。運動制御を担う神経系に関しては,精密把握が可能な手を持つ霊長類には存在し,それ以外の霊長類やその他の哺乳類には存在しない神経路が知られている。それが皮質脊髄路の一部をなす,大脳皮質の錐体路ニューロンから脊髄前角の運動ニューロンへの直接結合(CM結合corticomotoneuronal connection)である。」と述べています。

ヒト、類人猿、マカクザル・ヒヒなどの旧世界ザル、フキオマキザルだけがこのCM結合を持っており、精密把握が可能です。

リスザルは手の構造としては母指と他指の偽対向性がありますが、神経系のCM結合がないため精密把握ができません。

つまり、精密把持を行うには手の構造も重要であるが、それ以上にCM結合が重要であると言えるのです。

 

■脳の損傷

1968LawrenceDG、KuypersHGは実験から「CM結合を含む皮質脊髄路が損傷を受けると精密把握できなくなり、それが一生回復しない」という結果を出しました。

しかし、伊佐らの研究グループによって、1つの修正が加えられました。純粋に皮質脊髄路だけの損傷の場合、一旦精密把握はできなくなるが、訓練によって精密把握が回復してくると述べています。

 

■脳損傷後の可塑性

脳卒中からの回復のために脳内で神経が再結合・再形成・再構築される必要があります。これを「脳の可塑性」と呼びます。

では、どうすれば脳の可塑を促すことができるのか?

 

そのお話の前に脳卒中を起こした脳はどのような状態なのかを説明したいと思います。

脳卒中を起こしてすぐの急性期では脳内に2つの領域が現れます。

1、コア(虚血中心部)領域

梗塞や出血が起こった場所です。この領域の脳神経細胞は残念ながら死滅します。

2,ペナンプラ(半影部)領域

脳の損傷後、損傷部分の周りが「腫れた」状態になります。腕や足を怪我すると傷口の周りが腫れますが、同じことが脳にも起こります。

血液の供給が低下しており神経が働く上で効率が悪い環境になります。

この領域は神経は生きていますが「気絶した」状態になります。この領域が今後、役立つようになるかはリハビリに影響を受けます。

ペナンブラ領域の「気絶」状態から「覚醒」状態に切り替わっていく時期が「亜急性期」「回復期」で、一番「回復」が実感できます。

脳は「使えば成長するし、使わなければ退化」します。ペナンブラ領域の神経を再度働くように促さないと、機能が停止してしまいます。脳卒中後、麻痺側を使用しない「学習性不使用」が起こるとペナンブラ領域が働く機会が失われてしまいます。

上の脳の写真を見て下さい。脳の模型の隣に白い枝分かれした模型が映っていますが、これは神経の「樹状突起」という部分です。

働いていない神経はこの「樹状突起」自体も失われ、他の神経とも接合しなくなります。

以前のブログで「麻痺側肢は使わなければ良くならない」と述べましたが、脳の可塑性の為に麻痺側肢を使う事で神経を働かせて、神経間の接合を促していく必要があるわけです。

 

■慢性期に回復は起こるか

従来「亜急性期」を過ぎた「慢性期」(発症後3カ月~1年以降)は回復が難しく、能力が横ばいになる「プラトー」になると考えられていました。しかし、ここ10年の研究でプラトーを乗り越える方もいるということが証明されています。

PeterG.Levine (2014)は「「学習性不使用」によって「怠惰」になってしまった神経を働かせることで、神経間の結合を構築することができれば、慢性期以降であっても回復することは「可能」である」と述べています

実際の臨床でも発症から数年経っても「感覚がわかるようになってきた!」「指が動いた!」「足首が動いた!」とおっしゃる方に何度もお会いしました。

慢性期以降でも、是非みなさまとチャレンジを続けられたらと思います。

 

長くなりましたが、ここまでにしたいと思います。

 

私が若い時に指導して頂いた先生の言葉で、とても印象に残っている言葉があります。

「患者様にプラトーはありません。あるとすればそれはセラピストのプラトーです」

当時、私は自分の技能に行き詰っている時期でとても悩んでいたのですが、この先生のお言葉と臨床指導のお陰でいろいろなことにチャレンジすることができました。

今でも私のリハビリセラピストとしての根幹の言葉になっています。

多くの方が病気を抱えながら必死に戦っておられます。そんな方々のお力になれるように、この言葉を忘れずに今後も向かい合っていければと思っています。

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

加藤でした!

 

【参考文献・図書】

1)本間敏彦・坂井建夫 .霊長類の親指を動かす筋についてーヒトの手の特徴を考えるー.霊長類研究Primate Res.8:25-31,1992

2)PeterG.Levine .翻訳 金子唯史.エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション.株式会社ガイアブックス.2014

3)松沢 哲郎ら.霊長類進化の科学.2007

4)Anne shumway-cook Marjorie H.Woollacott 監訳 田中繁 蜂須賀研二:モーターコントロール 研究室から臨床実践へ 原著第5版.  医歯薬出版株式会社. 2020

運動学習③ー学習の効果を持ち越すためにー

2023.08.28 | Category: 成人

前回の投稿から、少し期間が開いてしまいました。

暑い日が続きますが、体調は崩されていませんか?

早く涼しくなってくれるといいのですが・・・。

 

今回は運動学習シリーズ③として、運動学習の学習効果を持ち越すために大切なことについてお話出来ればと思います。

 

【学習効果Carry-Over(持ち越し)のために】

①学習の転移

学習の転移とは、以前の練習や別の課題の経験の結果が能動的または否定的に影響することをいいます。

例:ベッド⇔車いすの移乗の運動を学習した結果、車いす⇔トイレの移乗も可能になる

SchmidtとLee(2005)は「学習の転移の量は課題や環境の類似性に依存している。つまり、治療の環境が実際の環境により類似するほど転移はよりよく起こる。」と述べています。

リハビリで「できること」が自宅で発揮できないなんて経験をしたことはありませんか?

リハビリで「できること」を自宅で「していること」にするために、自宅や職場環境などの詳細な情報収集を行い、できるだけ目標とする課題を遂行する時と近い環境を設定し、練習することが大切です。

 

②学習の定着

運動学習の定着は24時間後に再学習したほうがより完全になるとKrakauer & Shadmehr(2006)は述べています。

回復期の病院を退院した後は、ほとんどの方が毎日リハビリを受けることは難しくなり、「24時間後に」というのはなかなか達成しにくい状況になりますよね。そこで大切なのが、自主練習です。リハビリがない日は是非、無理のない範囲で自主トレを行ってみて下さい。

生活のスケジュールの都合で、自主トレもあまりできないという方もいらっしゃるかと思います。

そんな時は、イメージトレーニングをお勧めします。

運動の想像時には、補足運動野、運動前野、一次運動野といった脳の運動関連領野の興奮性が増加することが報告されています。 (Sharma et al.2006)

もちろん、一番効果的なのは実際に身体を動かす練習ですが、イメージトレーニングは身体的練習が行えない間の学習を高めることができます。

 

そして、運動学習の定着に外せないのが、睡眠です。

Stickgold R(2005  )は睡眠が記憶の向上に積極的な役割を果たし、特に運動スキルの記憶が睡眠によって固定すると述べています。運動学習の為、良質な睡眠は不可欠です。

是非、生活リズムや就寝環境(ベッドのマットレス、枕、クッション等)を整えて自分にとって快適な睡眠が取れるように工夫して頂ければと思います。

 

①から③まであった運動学習についてシリーズですが、今回で一区切りにしたいと思います。

長い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました!

加藤でした!

 

【参考文献】

1)久保田 競:学習と脳-器用さを獲得する脳-. サイエンス社. 2007

2)Anne shumway-cook Marjorie H.Woollacott 監訳 田中繁 蜂須賀研二:モーターコントロール 研究室から臨床実践へ 原著第5版.  医歯薬出版株式会社. 2020

3)森岡周:リハビリテーションのための脳・神経科学入門. 共同医書出版社. 2010

4)道免和久:運動学習から考察するリハビリテーション臨床. Jpn J Rehabil Med Vol.56 No.5  2019. P391-397

腰痛の話①

2022.01.24 | Category: 腰痛

皆さん、こんにちは。まだまだ寒い日が続きますね。いかがお過ごしでしょうか。

あまりに寒くて、ついつい縮んだ姿勢になり、腰痛になってしまった・・・。なんて方はいらっしゃいませんか?

今日は、腰痛についてお話させていただきたいと思います。

一言で「腰痛」と、まとめられていますが、腰痛を大別すると2つに分けることができます。

①レントゲンやMRI等、画像診断で異常が認められる「特異的腰痛」

②画像診断では異常が認められない「非特異的腰痛」

なんと腰痛を訴えられる方の85%がこの「非特異的腰痛」なんです。「腰痛の85%が原因不明である」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかも知れませんが、画像所見では異常が認められないので、原因の特定が難しいからなんです。

非特異的腰痛は、姿勢が悪い・運動不足・長時間の同一姿勢・肥満などの体形の問題・ストレス・・・。など様々な要因が考えられています。

ここでちょっと疑問。ストレス・・・?腰痛に関係あるの?

ということで調べてみました。

脳には必要以上の痛みを感じないように、痛みを和らげる機能があります。脳内のβエンドルフィンという物質が作用し、痛みを小さく感じさせます。しかしストレスがあると、このβエンドルフィンの放出量が減少し、痛みを強く感じるようです。

・・・ストレスってやっぱり侮れませんね。

 

この「非特異的腰痛」は、手術をする必要がないので運動療法が治療のメインになります。

よく「腰痛には腹筋を鍛えろ!」「体幹筋を鍛えれば腰痛は消える!」といった本を目にします。

なぜ、腰痛には体幹筋なのか?ということを次回、お話させて頂きたいと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

加藤でした!

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