Blog記事一覧
まだまだ暑い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか?
子どもたちの夏休みも終わり、もう9月ですがなかなか涼しくなりませんね・・・。
早く過ごしやすくなってほしいものです。
2カ月ほど、ブログで難しい話が続きましたので今日はライトなお話をしたいと思います!
ここ最近、当センターでは新しいおもちゃを入荷したのですが、
その中で特にお子様に人気だった当センターでのヒットおもちゃを紹介したいと思います。
1つ目はダイソーさんの「ポップチューブ」です。
私が購入したものは、4本入りで110円でした。
写真のように蛇腹状になっているチューブです。
のばすと・・・。
倍以上の長さになります。
伸ばすときの「ぽきぽきぽき」という音と感触が面白いようでみなさん夢中になって遊んでくれます。
感覚遊びが好きなお子様で、両手での活動を促したいときにこのおもちゃを使っています。
把持が苦手なお子様は、上の写真のように少しだけチューブを延ばして使用しています。
蛇腹の溝が指にフィットしやすく、凹凸によって手掌にも表在感覚・固有覚が入力されるので、把持がしやすくなります。
このおもちゃは繋げたり、形を変えることができます。
感覚遊びが好きで、なかなか次の段階に遊びが移行しにくいお子様に
このおもちゃを導入すると、感覚遊びの中にも構成的な要素を含んだ遊びに展開できるので、とても重宝しています。
2つ目は、ダイソーさんの「押すと鳴く鶏」です。
他のお店では「びっくりチキン」や「叫ぶチキン」という商品名で販売されています。
見て下さい。触らずにはいられないこのフォルム・・・。
表面のこの「鳥肌」のぼこぼこが指先に引っかかりやすいのか、把持力が弱いお子様でも持ちやすいようです。首や足は、持ちやすい太さでしっかりと握る練習ができます。
胴体の部分は下の写真のように分厚くなっているので・・・。
指を伸ばした状態で、親指とそれ以外の4指で押しつぶすという手のひらの筋肉を使った握り方(手内握りといいます)の練習ができます。この握り方ができると今後のハサミや書字、スプーンといった巧緻的な道具操作が行いやすくなるので、とてもよい手・手指の練習になります。
しっかり握ることができると大きな音がなるので、成功しているかがお子様にもわかりやすいのがとても気に入っています。
できないこと・苦手なことを練習するのは、大人でも忍耐力が必要ですよね。
ですから、お子様には遊びを通してリハビリを行い、遊んでいる中で「やってみよう!」「挑戦してみよう!」と前向きに取り組めるような環境・遊び・声掛け・道具やおもちゃを設定するように心掛けています。
これからもお子様が楽しめて、リハビリに役立ち立ちそうなおもちゃや道具を探していきたいと思います!
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
加藤でした★
前回の投稿から、少し期間が開いてしまいました。
暑い日が続きますが、体調は崩されていませんか?
早く涼しくなってくれるといいのですが・・・。
今回は運動学習シリーズ③として、運動学習の学習効果を持ち越すために大切なことについてお話出来ればと思います。
【学習効果Carry-Over(持ち越し)のために】
①学習の転移
学習の転移とは、以前の練習や別の課題の経験の結果が能動的または否定的に影響することをいいます。
例:ベッド⇔車いすの移乗の運動を学習した結果、車いす⇔トイレの移乗も可能になる
SchmidtとLee(2005)は「学習の転移の量は課題や環境の類似性に依存している。つまり、治療の環境が実際の環境により類似するほど転移はよりよく起こる。」と述べています。
リハビリで「できること」が自宅で発揮できないなんて経験をしたことはありませんか?
リハビリで「できること」を自宅で「していること」にするために、自宅や職場環境などの詳細な情報収集を行い、できるだけ目標とする課題を遂行する時と近い環境を設定し、練習することが大切です。
②学習の定着
運動学習の定着は24時間後に再学習したほうがより完全になるとKrakauer & Shadmehr(2006)は述べています。
回復期の病院を退院した後は、ほとんどの方が毎日リハビリを受けることは難しくなり、「24時間後に」というのはなかなか達成しにくい状況になりますよね。そこで大切なのが、自主練習です。リハビリがない日は是非、無理のない範囲で自主トレを行ってみて下さい。
生活のスケジュールの都合で、自主トレもあまりできないという方もいらっしゃるかと思います。
そんな時は、イメージトレーニングをお勧めします。
運動の想像時には、補足運動野、運動前野、一次運動野といった脳の運動関連領野の興奮性が増加することが報告されています。 (Sharma et al.2006)
もちろん、一番効果的なのは実際に身体を動かす練習ですが、イメージトレーニングは身体的練習が行えない間の学習を高めることができます。
そして、運動学習の定着に外せないのが、睡眠です。
Stickgold R(2005 )は睡眠が記憶の向上に積極的な役割を果たし、特に運動スキルの記憶が睡眠によって固定すると述べています。運動学習の為、良質な睡眠は不可欠です。
是非、生活リズムや就寝環境(ベッドのマットレス、枕、クッション等)を整えて自分にとって快適な睡眠が取れるように工夫して頂ければと思います。
①から③まであった運動学習についてシリーズですが、今回で一区切りにしたいと思います。
長い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました!
加藤でした!
【参考文献】
1)久保田 競:学習と脳-器用さを獲得する脳-. サイエンス社. 2007
2)Anne shumway-cook Marjorie H.Woollacott 監訳 田中繁 蜂須賀研二:モーターコントロール 研究室から臨床実践へ 原著第5版. 医歯薬出版株式会社. 2020
3)森岡周:リハビリテーションのための脳・神経科学入門. 共同医書出版社. 2010
4)道免和久:運動学習から考察するリハビリテーション臨床. Jpn J Rehabil Med Vol.56 No.5 2019. P391-397
前回は脳卒中運動学習について①ということで、小脳による誤差学習と中脳ドーパミンによる強化学習についてお話しました。
今回は運動学習について、3つの段階の段階があること、それぞれの段階で重要なこと、我々セラピストが臨床でどのような工夫をおこなっているかについてお話したいと思います。
【運動学習の3つの段階】
運動が自動化、つまり無意識的に運動が行えるまでに3つの段階があり、学習の段階によって脳の活動する場所が変化していきます。
①の認知段階は、「試行錯誤」を行っている段階で小脳の誤差学習が強く、感覚への気づきがとても重要です。
この段階の重大な条件は正しい運動指令と運動に関連する感覚の正しい関係の成立となります。
その為、我々セラピストは、利用者様の運動時、あるいは運動前に適切な感覚が入力されるように、筋肉の位置や硬さ・長さを準備し、運動時の関節の運動方向、姿勢コントロール、座面や床と利用者様の重心位置など、様々なことに徒手的に介入し、適切な感覚情報が入力されるように促しています。
写真1 適切な運動のタイミングで筋が活動するように、利用者様の弱い筋肉をセラピストが把持し、筋肉へ固有感覚を入力している
正しい運動の際に学習者は正しい感覚情報に注意を向けることが大切なのですが、転倒に対する恐怖心や非麻痺側での代償的な過活動、痛みによる防御反応などがあると、運動中に感覚情報に注意を向けることが難しくなります。(そもそもこれらのことがあると正しい運動も難しいですが・・・)
その為
◆目標とする課題の難易度を調節
◆転倒の恐怖心をなくすために利用者様の近くにテーブルや手すりを用意するなどの環境設定
(※利用者様によっては近くに掴まるところがあると非麻痺側の過剰な活動が強まる方もいらっしゃるので、その場合はあえて台などを近くにおかないなど、利用者様の特性を評価した上で環境設定を行っています)
◆セラピストによる軽度の接触で恐怖心を軽減するなど、
感覚情報に注意が向くように工夫しています。
そして利用者様は学習課題を理解・意識し、正しい運動を選択して実行する必要があります。
その際に適切なフィードバックが与えられれば、その中の必要な情報は繰り返されることで学習されていきます。②連合段階にあたります。
最終的な目標は運動の自動化ですので、運動の習熟に従って徐々にセラピストの介入量を減らし、利用者様が自分一人で運動ができるように段階付けを行っています。
③自動段階で重要なことは、運動に「過度な注意を必要としないこと」です。
セラピストの声掛けによって、運動中に過度な注意を求めると本末転倒になってしまいます。
声掛けで意識を促すのか感覚情報で無意識的な姿勢・運動コントロールを促すのか、運動学習の習熟度や課題の内容によって見極める必要があります。
【まとめ】
・運動学習には①認知段階②連合段階③自動段階の3つの段階がある
・学習の初期段階は正しい運動の指令と適切な感覚情報の入力が重要で、適切な感覚情報が繰り返されることで運動学習が進む
・学習者は感覚情報に注意を向ける必要がある
・学習者は正しい運動を選択するために課題を理解・意識する必要がある
・「過度な注意を要求」しないで運動が行える神経の基礎を作ることがセラピストの目標である。
長くなってしまいましたので、ここで一区切りにしたいと思います。
次回は、運動学習の定着についてお話できればと思います。
加藤でした。
【参考文献】
1)久保田 競:学習と脳-器用さを獲得する脳-. サイエンス社. 2007
2)Anne shumway-cook Marjorie H.Woollacott 監訳 田中繁 蜂須賀研二:モーターコントロール 研究室から臨床実践へ 原著第5版. 医歯薬出版株式会社. 2020
3)森岡周:リハビリテーションのための脳・神経科学入門. 共同医書出版社. 2010
今日は脳卒中の方々の運動学習についてリハビリ場面での話も加えながらお話ししたいと思います。
かなり長くなりそうですので、何回かシリーズに分けてお話できればと思います。
そもそも運動学習とは何でしょうか?
「運動学習とは望まれるまたは強化すべき運動を生み出すために、練習を通じて運動の正確性と効率性を変化させることである」
LlinasR,Welsh JP:On the cerebllum and motor learning. Curent Opinion in Neurobiology, 3 :958-965, 1993
運動学習は脳卒中後にも起こり、治療に関係なく日常生活の中で代償的行動の方法として起こります。
例えば、非麻痺側での代償活動、麻痺側上肢・手の不使用が代表的な例になるかと思います。適切に麻痺側が使用されないと回復の妨げになる可能性があります。逆に、適切な麻痺側の使用を学習していけば、回復の助けとなります。このように運動学習は身体機能の回復に対して肯定的にも否定的にもなります。
【運動学習のメカニズム】
運動学習は脳の中でどのように行われるのでしょうか?
①小脳による誤差学習
運動を行う際には、一次運動野、運動前野や補足運動野など大脳皮質の様々な場所から運動指令が出ます。
小脳はその運動指令から、現在の状態・感覚情報がどのようになるかを予測します(順モデルと言います)。
そして、運動中の実際の状態・感覚情報から運動指令の過程を生成し、一次運動野、運動前野や補足運動野などの大脳皮質へ投射します(逆モデル)
図①小脳・大脳皮質間の投射
このように、予測された身体の状態・感覚情報と実際の運動中の身体状態・感覚情報が比較照合されることで誤差を検出し、修正することで運動学習が行われます。
そのために固有感覚、視覚、前庭覚などのフィードバック情報はとても大切になります。
運動時、あるいは運動前に適切な感覚が入力されるように、我々セラピストは利用者様の筋肉の位置や硬さ・長さ、関節の運動方向、姿勢コントロール、座面や床と利用者様の重心位置など、様々なことに徒手的に介入しています。
運動学習に重要な固有覚は関節や筋肉からの感覚になりますので、筋肉の状態の改善はとても大切です。
薄くなって硬くなった筋肉をセラピストの手の中に集めて、筋肉が働きやすくなるように介助したり、セラピストの手で筋肉の収縮を促す中で筋肉の硬さを取りつつ、少しずつ長さを出しています。マッサージと勘違いされることもありますが決してマッサージではありません。
このように身体の状況を整えながら、目標としている課題の動作を練習していきます。さきほども述べましたが、運動学習は、脳内の運動プログラムと実際の運動時の感覚情報の誤差による学習なので、学習者の能動的な参加・練習の機会が必要です。
他動運動だけでは運動遂行能力は改善しない(Lotze et al.,2003)
②中脳ドーパミン作動系の強化学習
強化学習とは、「報酬」に対して行動戦略を学習していくことを言います。
図②中脳の位置
中脳は図②のオレンジの部分です。
中脳の一部に黒質と呼ばれる神経核があり、黒質線条体路に沿って線条体に投射し、神経伝達物質であるドーパミンを分泌します。
図③脳の水平断面図 被殻と尾状核を合わせて線条体という(緑に着色)
ドーパミンニューロンは、期待する行動や運動がうまくできた場合や、予期せぬうれしいことが生じた場合に発射頻度が増加します。
ドーパミンが分泌されると脳の各運動領域は・・・
運動野:運動が速く強くできる
運動前野:器用に動かせる
前頭前野:ワーキングメモリー、注意、思考、推理、計画性・・が向上する
側坐核:やる気の向上
いいことばかりですね!昔から「好きこそものの上手なれ」なんていいますが、このドーパミンの作用が大きいです。
強化学習は報酬による学習です。
ここでポイントになるのは、学習者が「予測していた報酬より大きいかどうか」になります。
報酬のそのものの大きさではありません。
強化学習を実際のリハビリ場面で活かすにはどうしたらよいでしょうか?
道免⁵⁾は「患者自身が何をどのように達成すべきか(課題のゴールや報酬の大きさ)を認識し、動作を行う前に、次はこれぐらい達成できるだろうと予測している状態で、動作遂行後に予測よりもうまくできたときにその動作が強化されると考えられる」と述べています。
これらを達成する為、利用者様自身が認識・理解できるゴール・課題設定が重要になります。
我々セラピストは、課題の種類や難易度、動作の説明や指示・声掛けの内容など様々な工夫を行い、利用者様に課題を認識・理解していただけるように心がけています。
また、ゴール・達成すべき課題がイメージしやすいように実生活で患者様・利用者様にとって意味のある課題を練習する、
「課題志向型訓練」も大切にしています。
課題設定と予測以上に「できた!」という利用者様の実感、「こうなりたい、こうしたい」という具体的な目標を大切にすることが、強化学習の観点からも大切であることがよくわかります。
今日は運動学習のメカニズムについてお話しました。
かなり長くなりましたので、今回はここまでにしたいと思います。
次回は運動学習の3つの段階についてお話できればと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
加藤でした
【参考文献】
1)久保田 競:学習と脳-器用さを獲得する脳-. サイエンス社. 2007
2)Anne shumway-cook Marjorie H.Woollacott 監訳 田中繁 蜂須賀研二:モーターコントロール 研究室から臨床実践へ 原著第5版. 医歯薬出版株式会社. 2020
3)森岡周:リハビリテーションのための脳・神経科学入門. 共同医書出版社. 2010
4)訳 越智淳三:解剖学アトラス 第三版. 株式会社文光堂. 2002
5)道免和久:運動学習から考察するリハビリテーション臨床. Jpn J Rehabil Med Vol.56 No.5 2019. P391-397
前回は発達障害をお持ちのお子様に対してのコミュニケーション発達の支援についてお話しました。
今回は身体障害をお持ちのお子様のコミュニケーション発達の支援についてお話したいと思います。
「共同注意」とは、他者と関心を共有する物事や話題へ、注意を向けるように行動を調整する能力(Bruner,1975)ことをいいます。
ただ見ているだけではなく、他者と視線と注意が共有されていることが大切になります。
「共同注意」は、乳児と養育者がある対象を同時に見る「共同注視」の機能が必要です。
【共同注視の発達のためのこどもへの支援】
①姿勢制御の話
常田(2007)は共同注視の質が、子供の姿勢制御能力の発達によって制約を受けること示唆しました。
下のグラフは常田の実験で、共同注視が成立した時のこどもの月年齢と対象物の位置関係を表しています。
こどもの首がすわる前の生後2か月ではこども―対象物ー母親の顔が一直線にならんでいた時にしか共同注視が成立しなかったことに対し、首がすわりだした生後3~4か月ではこどもの顔の前、座位を獲得しだす生後5か月~7カ月では体の前、座位が安定しずり這いやハイハイなど自己での移動が可能になってくる生後7か月~9カ月では背後の空間まで共同注視が成立しています。
姿勢制御の発達に伴い、共同注視が可能な範囲が拡大していくことがわかります。
特に座位を獲得しだす生後5月~7か月の変化が著明ですね。
生後5月~7か月ごろの大きな姿勢制御の変化として体幹が安定し、姿勢の保持に使われていた上肢が支持の役割から解放され、おもちゃへ積極的にリーチを行うようになります。
つまり能動的に周囲に働きかけていくようになります。
私は共同注視の範囲拡大にあたり「座位の獲得」よりも、この「能動的に周囲に働きかけるようになる」という部分が重要だと考えています。
リハビリ場面でも、座位を獲得しているお子様であっても、よく使う方の手の空間(例えば、右手の方がよく使う場合、右側の空間)には注意が向きますが、ほとんど使っていない方の手の空間には注意が向きにくく、声掛けをしながらおもちゃを提示しても共同注意が成立しにくいといった場面によく出くわします。
吉川(2018)の重症心身障がい児の研究で大変興味深い研究がありましたので、ご紹介したいと思います。
痙直型四肢麻痺の10歳のお子様に対し、支持座位でリーチ課題を行いました。
こちらのお子様は普段は右手を使用されることが多いようです。
B8の位置へのリーチは、提示物に自発的に気づくことができずに、目前に物を提示し配置しなおした上でリーチの促しが必要だったそうです。
しかし、B8へのリーチ課題を5回実施した後は、提示者の視線のみで提示物に気付くことができ、共同注視も確認されるようになったとのことでした。
このことから吉田(2018)は「視覚的注意の配分は、手の使用頻度と関係して空間的広がりをもつと推測された」と述べています。
この研究は1症例のみの研究ではありますが、普段の臨床でもこのようなことはよく体験します。
胎児期や出生後まもなくの時期など、早期に重篤な脳の障害を受けたお子様は心身機能に重複した障害が見られます。その結果、刺激を受容する感覚や周りの環境へ能動的に働きかける行動が難しくなります。
お子様が能動的に活動できるように体幹・上肢機能の向上、起居動作の獲得はもちろん、座位保持や歩行器・起立台など上手く福祉機器を使いながら、お子様が能動的に活動できる手助けが大切です。
お子様の能動的な活動を支援する際に大切にして頂きたいことがもう一つあります。それは「待つこと」です。
上に記載したように運動の難しさに加えて、感覚や刺激の受容・処理にも難しさを抱えておられるお子様は、感覚の受容・処理に時間がかかり、運動の開始が遅れることがあります。
お子様の運動が開始される前に大人が手伝ってしまうとお子様が能動的に活動するチャンスが少なくなってしまいます。
お子様の様子を見ていると手伝いたくなってしまうこともあるかも知れませんが、そこはぐっとこらえて、是非「待つこと」と意識してみてください。
②注意と覚醒
注意機能を発揮するには、適切な覚醒レベルであることが大前提となります。
覚醒が低くても、高すぎても(興奮状態・泣き叫んでいる等)周囲への注意が向けにくくなります。
お子様が穏やかにすごしている覚醒レベルが理想です。お子様とのかかわりの中で、覚醒水準の調整は必須です。
部屋は明るい方がいいか・うす暗い方がいいか
部屋は広い方がいいか・ある程度狭い方が落ち着くか
部屋は静かなほうがいいか・ある程度生活音があるほうがいいか
多くの方がすでにされていることと思いますが、対象のお子様がリラックスできる環境をぜひ探してあげて下さい。
③視覚の話
共同注意の発達の為に提示するおもちゃの工夫も大切です。
特に脳性麻痺児は、近視・遠視・乱視・斜視・立体視ができない・微細なサッケード運動の難しさ等、80%は何らかの視覚的な障害をきたす(Kozeie 2007,2008)と言われています。
児にとって、少しでも見やすいおもちゃを用意することが大事になることも多いです。
色の識別の発達としては、赤と緑、黄色と緑の区別は2か月で可能となり、これらは比較的見やすい色になります。
縞模様も見やすく、48カ月には大人の縞視力の水準に到達すると言われています。
青を処理する網膜の錐体細胞の発育は遅く、黄緑と紫の区別は4か月でも難しいそうなので、提示するおもちゃは、赤・緑・黄色、縦縞などが見やすいと思います。
信号機と同じ色ですね!
また、可能でしたら是非お子様の眼球運動の評価を行ってあげて下さい。
背臥位や座位、立位それぞれの姿勢で、お子様の頭が動かないように安定させた状態で、眼球だけで上下左右同じ範囲を動かせるか、おもちゃを遠くから近づけて両目が均一に近づくか(輻輳[ふくそう]と言います)、おもちゃを左右や上下に一つずつ提示し、素早く視線を動かせるか等、確認してあげて下さい。
お子様によって、眼球運動がしやすい姿勢が違いますし、どの位置であればおもちゃが見やすいかを確認しましょう。
そして、見やすい位置からおもちゃを提示し、おもちゃと養護者の顔を交互に注視しやすいように関わってあげて下さい。徐々に苦手な方の空間にも視線が向けられるようにチャレンジして頂ければと思います。
リハビリをしていて、お子様が座ったり、立ったり、手が使えるようになることはとても嬉しいことです。
でも、それ以上に嬉しいのは、お子様と家族様が笑いあって楽しそうに過ごされている場面に出会えることです。
微力ながら、そんな場面を多く持てるようなお手伝いができたらと改めて思います。
かなり長くなってしまいましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。加藤でした★
【参考文献】
1,常田美穂(2007)乳児期の共同注意の発達における母親の支援的行動の役割. 発達心理学研究 第18巻 第2号 97‐108
2,吉川 一義(2018)重症心身障害児の空間への視覚的注意と姿勢・運動調整の関係. 特殊教育学研究 55(5)249-257
3,児山隆史・樋口和彦・三島修治(2015)乳児の共同注意関連行動の発達-二項関係から三項関係への移行プロセスに着目して―. 教育臨床研究 14 2015研究.P99-109
4.大藪泰(2020)共同注意の発達-情動・認知・関係. 新曜社
5. 浅野大喜(2012)リハビリテーションのための発達科学入門. 株式会社協同医書出版社
6. 2013 ボバース基礎講習会資料